fantasy:ファンタジー
イスラム教の天使 -無断転載・流用は禁止です-

■神と人との仲介者:マライカ(Malaika)■
イスラム教における天使像、そして天使と人間との関係は、キリスト教、ユダヤ教とはだいぶ異なる。
全知全能の神アラー(Allha)は、泥から人間を作り、(この点は聖書同様)天使は火を材料に作った。
アラーは、反対する天使たちの声を聞かず、人間の始祖アダムを作り出した。そして、アダムにありとあらゆる事物の名前を教えた。
ユダヤ教徒や、キリスト教徒は、神の名前を口にする事をタブー視しているが、イスラム教では、そのような考え方はない。アラーというものも本来は普通名詞の”神”であり、アラビア語ではYHWHにあたる、つまりは固有名詞と考えられている。
また、人間が天使たちに事物の名前を教えたとされており、人間こそが”神の代理人”として地上を支配する権利をもっている。

■コーランに登場する天使■
※ジブリール(ガブリエル)とミカイール(ミカエル)は四天使のコーナーで紹介したので、それ以外の天使を紹介。
■イスラフェル(Israfel)■
名称 役割
燃えさかるもの 聖なる音楽をつかさどる
流れる涙が大地に洪水をひきおこす
審判の日にラッパを吹く天使の一人としてイスラム教においては重要な役割を果たす天使である。
別名はイスラフィル(Israphel)、サラフィエル(Sarafiel)、イスラフィエル(Israphel)など。
アラビアの伝承では、彼は4つの翼を持ち、大地に足をつけながらその頭は神の玉座のひさしに届くほどの巨体の持ち主とされている。ちょうどユダヤ教の大天使であるメタトロン(Metatron)と同様なイメージを与えられている。
・洪水となる涙:最も重要な任務に1日のうち、昼間に3回、さらに夜間に3回、地獄を視察することとされている。主な内容は、地獄に落ちた人間の監視、とされている。そして、阿鼻叫喚、地獄の責め苦にあえぐ人間たちを見て決まって悲しみに震え、大粒の涙を流すという。もし、神がやめさせなければ彼の流す涙は大地にあふれて洪水になってしまうとされている。
・ジブリールの前にムハンマドに教育:ジブリールが訪れる3年前に、既に彼が訪れ”神の言葉”を聞かせるための下地作りをしていたと言われる。
・音楽をつかさどる天使:モスク(イスラム寺院)で詠唱されるコーラン。これは、独特のリズムと韻をもち、非常に音楽的要素我強い。これは、カーヒンが神懸かりなると低く、囁くような声と独特のリズムで、神の言葉を人々に語った事がもととなっている。彼はカーヒン、つまり神の声を聞く巫女たちをつかさどる天使とされる。ユダヤ教や、キリスト教でも音楽の持つ役割は大きい。神はある種のバイブレーションを発すると考えられており、それのより世界、あるいは宇宙が運行されると言われているからである。

■アズラエル(Azrael)■
名称 役職 シンボル 居住する世界
神の救い 死をつかさどる 閻魔帳 第三天
誕生と死を記録する異形の天使
ヘブライ、アラブの伝承では、第3天に所属する”死の天使”として知られ、”復活の日”にラッパを吹く天使の一人とされている。別名アズライル(Azrail)、アシリエル(Ashiriel)、アズリエル(Azriel)など。
イスラム教徒にとってアズラエルは、キリスト教の同職であるラファエルとはその姿形も大きく異なり、70000本の足と4000の翼、さらに無数の目と舌を持つ存在として、畏怖されている。
・閻魔大王の様な役割:アラブ神話では、常に分厚い一冊の書物を持ち歩き、新たに人間が誕生するたびに加筆し、死に至る人間がいるとその名簿から名前を消す。

■イブリース(Iblis)■
名称 役割
絶望、断念 人間を悪の道に誘う
人間にひざまずかず、神の怒りを買った天使
別名エブリース(Eblis)、ハリース(Halis)。キリスト教で言えば、”堕天使”であり、サタン(Satan)の役目を演じている。
・アダムを陥れた天使:アラーが陶土をこねて人間の形を作り、それに息を吹き込んで生命を与えた後、周囲の天使たちに人間の前にひざまずき、礼拝をするように命じた。天使たちは、一斉ににひれ伏したが、イブリースだけはひれ伏さなかった。自分は、火で作られた。泥で作られた人間にひざまずく必要はないというのである。そして、「回教の途中で人間を待ち伏せし、あらゆる方向から人間を襲い、神に対する感謝の気持ち(敬虔な気持ち)をなくさせよう」と言った。神は「蔑まれ、追い立てられ出て行くがよい。また、なんじについて行くような人間、今にシャハンナム(ゲヘナの火:地獄)を彼らで一杯にしてやろうぞ」と彼に告げた。楽園で暮らすアダムを陥れたのも彼である。
・正体は妖魔ジン:彼は、神が造った天使ではなく、イスラム以前からアラブ社会の俗信として存在されたとされる「妖魔ジン(Jinn)」であるとされる。

■ハルトとマロート(HarutとMaroth)■
役職
地獄の番人
地獄の番人
常に二人で行動する”地獄の番人”。地獄に落ちた罪人たちに容赦なく、激しい責め苦を追わせることが使命。
イスラム以前からアラブに存在し、その当時の名前はハロート(Haroth,Haroot)、マリク(Malik)と称していた。彼らは堕天使ではなく、神に仕える忠実な天使である。
シャハンナム(地獄)は、生前にアラーを信仰せず、不義や悪徳を働いた者は、その罰として地獄へ落とされ、永遠の責め苦を受ける場所。地獄には7つの門があり、7種類の地獄が存在するという。


注釈
名前
名前を教えるという行為は、そのものの本質を教える事である。名前を知ることは重要であり、かつ危険を伴う。ユダヤ教徒は神の名をYHWHとしか記さないし、後に出てきた言葉、アドナイ(Adonai)というのも”我が主”と言う意味。またエロヒム(Elohim)も”神”を意味する普通名詞であり、固有名詞を口にすることは、タブーなのである。
カーヒン
ムハンマドの時代、アラビアにいた一種のシャーマン(巫女)。予言者ムハンマドもカーヒンであったという。
宗教と音楽
宗教における音楽の存在は重要である。音楽の発生そのものが、宗教と切り離せないものである。太鼓や鐘を鳴らし、笛を奏でるといった原始の音楽は、強烈な呪術的要素を持ち、それに伴い舞踏も出現した。音を発生させるという行為自体が精神を集中させ、更には瞑想的効果を持ち、それを聞く者にも同様の効果をもたらすのである。
ジン(Jinn)
ジンは、普段は不可視の存在だが、凝結すると雲や煙のような気体状になり、やがて固体となるという。ジンは、人間の作られる2000年前に作られたとされ、知力・体力共に人間に勝ることから、様々なエピソードを生み出してる。いたずら好きで、時には人間を死に至らしめる事もあり、人々は護符としてスライマーン(ソロモン)の名前を使う。ジンに取り憑かれた人間はマジュヌーン(Majunun)といわれ、雄弁多才で詩人、歌手、巫女、占いなどに能力を発揮するという。


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